パドゥークで作った大きな木のスプーン。オイル仕上げ。
実はこれ、リングピローなのだ。
前にも一度、友人のためにつくったことがある木のリングピロー。
今度は、たった一人の姉のために。
先週、2月17日は姉の結婚式。
前代未聞の、非常に愉快な式/披露宴であった。
リングピローのデザインは、姉とその旦那様のアイデア。
木を選び、荒削りするところまでは、
実際にうちにきて木を削り、2人に作業をしてもらったんである。
その後、私が仕上げて、ヒノキで台座を作りお花で装飾。
そして、式当日は、私がそのリングピローを持って、
式場の通路(バージンロード)を1人で歩いたのだ。誰よりも最初に。
「指輪の入場です。」
という何だかよく分からないアナウンスとともに、新郎よりも新婦よりも、誰よりも最初に私が入場するという、前代未聞の演出である。心の準備が出来ないままに扉が開き、まったく緊張していない新郎新婦に見送られながらひとり式場へ入場。
私はというと、あれほど緊張したことは、
後にも先にもあの時だけではないか、というほどの緊張っぷりであった。
2人ともこの写真では真面目な顔をしているが、終始笑いの絶えない式であった。何せ、新婦が式の最中に歯を見せて笑っていたくらいである。
何はともあれ式は無事に終了し、いよいよ披露宴である。
新郎新婦の入場の前に、会場内を見回していると、見慣れないものを発見。
パンである。
ウェディングケーキがあるはずのところに、バゲット。
もちろん私は事前に聞いていたが、
会場内には「何?あのパンは。」といった声が聞こえる。
そう、「パン入刀」である。
パン好きの姉たっての希望で、ケーキからパンへのまさかの変更。
その発想もすごいが、
そんな要望にも対応してくれる式場の柔軟さにも驚きである。
もちろんファーストバイトも一筋縄ではいかない。
斬新だ。さすが我が姉である。
そして、和やかに宴は進み、
この日の私的メインイベント「お色直し」の時間がやってきた。
この瞬間のために半年も前から準備してきたんである。
衣装は全て、私の高校時代の友人である
イギリス在住のCostume Designer 、
Miyuki Kawashitaさんと、
その友人である井上さんの手作り。
構想段階から相談にのってもらい、打ち合わせを重ね、
デザインから縫製まで全てお願いしたという。
そして、いよいよ新郎新婦の登場。
BGMは馬の嘶きと蹄の音。
そして、少しの間をおいて、二階堂和美が歌う「亭主関白」が鳴り始める。
勢いよく扉が開くと、そこにいたのは王子様。
そうなんである。
前代未聞の、「新郎だけがお色直し」。
王子の衣装がとてもよく似合っている。
新郎が、結婚式で王子の衣装を着るのが夢だったということで、
それならば本気でその夢を叶えようじゃないか、と頑張ったのだ。
ちなみに、この衣装の事は、
新郎新婦とうちの両親以外には秘密にしていたため、
新郎側のご両親やご親族の反応が非常に心配だったんである。
しかし心配は杞憂であった。会場内は沸きに沸いた。
ほぼ全員が立ち上がり、2人の姿をカメラに収めようと必死である。
大好評だ。
王子の衣装は非常に伝統的な手法で作られているそうで、縫製も丁寧。
ここがイギリスで、時代が時代であれば、
そのまま町に出ていけそうなほど、しっかりと作られていた。
心のこもった丁寧な仕事に、涙がこぼれそうになった。
みゆき、いろいろと無理を聞いてくれて、本当に本当にありがとう。
そして、おふたりへ。
本当におめでとうございます。
これからも、仲良く楽しく不思議な家庭を築いていってください。
困った事は何でも相談にのります。末永ーくお幸せに◎
歳もひとつしか違わず、顔も声も他人から言わせればそっくりで、
小さい頃は喧嘩もたくさんしたけれど、
2人で海外旅行に行くぐらい仲が良くて、
姉だけれど妹のようでも友達のようでもあり、
そして姉妹というよりは双子とか分身のような感覚で、
私は彼女の事を誰よりも一番理解しているつもりでいて、
誰にでも優しくてのんびりしているように見えるけれど、
実はめちゃくちゃ短気なところとか、
絶対に人には見せない顔も知っていて、
言葉にしなくても通じることがたくさんあるのが面白くて、
そんな彼女の花嫁姿をみたとき、
いったいどんな気持ちになるだろうとずっと考えていたけれど、
不思議と涙は出なかった。
本当に、心の底から嬉しくて楽しい1日だった。
結婚したんだなぁ、と実感したのは、翌日、家へと帰る車の中。
早朝、高速道路を走りながら自然と涙が出てきたことは、
ここだけの秘密である。